> ビジネス書の書評 > 正しい場所で、正しい方向で、十分な量をなされた「努力」は報われる。(林 修)

正しい場所で、正しい方向で、十分な量をなされた「努力」は報われる。(林 修)

<引用>

林 修「林修の仕事言論」(青春出版社 2016年)

「努力は報われるは、すこし不正確だと思っています。より正確に表現するなら・・・正しい場所で、正しい方向で、十分な量をなされた努力は報われる

やみくもに打ち込めばいいのでなく、まず「正しい場所」に立たなければ、非常に効率が悪い。・・・努力には方向性があります。自分の方向づけの判断より、意外と第三者のほうが的確な判断を下せることが多いのです。・・・努力の量は、十分な量に足らないのに、自身の判断基準自体が甘い人が多い。だから、周囲の人のレベルもまた非常に大切になるのです。」

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<考察>

林修氏は、「仕事観」について熱く多弁に語ります。

僕は、好きなこと、やりたいことを仕事として選ぶという感覚は皆無です。予備校講師という仕事だって、(大)嫌いな仕事ですが、(誰よりも)できるという自負のもとに続けてきたそうです。その分野が自分に適性があり、勝てる場所=正しい場所だと認識し、支払われるお金に責任をとる、やりたくない仕事を全力でやると、やりたい仕事に近づけるはずと考えています。

「やりたいこと」にこだわり過ぎない、運に巡り合いたいならば、なんでも引き受けるといい

「一流」を目指すことから、すべてが始まる。優秀な人は、環境に不満を言わない

自分の仕事の「ゴール」とは、何かを考えるべきです。お金はあくまで手段、最終的な目標にしてはいけない。お金は稼ぎ方より、使い方のほうが難しい

公言しているように、友達は少ない。自分から人脈を広げようという気がまったくありません。真の人脈は、仕事を通してしか広がらない。一緒に仕事しましょうとなったら、相手の期待値を読み、そして超える

「運」が「縁」を呼び、「縁」が新しい「運」を呼んでくる

物事が「そうであること」と「そう見えること」に差はない。人に見せる自分は大切です。それが全てと言っても過言ではありません。例えば、美人であるかということと、美人に見えるかということでは、むしろ美人に見えるほうが大事である。

林修氏は、さまざまな資質の人がいて、自分と向き合うことで、己の「仕事観」を築き、さらに己の「方法論」を確立して、ようやくうまくいくのが、仕事だと喝破します。安易なマニュアルを読んで、どうにかなるようなものではない。「こういう悩みにはこれ、こういう問題はこう解決しろ」といった、一つの「コツ」なるものでなんとかしようとする精神の怠惰さが一番の問題だと指摘します。

自分と仕事で関わった全ての人に「よかった」といってもらうプロフェッショナルな仕事意識を「ゴール」にしたい、という思いに共感するところが多く感じた書籍です。