「今日」は決して何かを達成するためのリハーサルや準備期間でなく「本番」です。(岸見一郎)
<引用>
岸見 一郎「絶望から希望へ 悩める若者と哲学者の幸福をめぐる対話」(大和書房 2022年)
「今日できることを丁寧にしていけば、遠くまで行けるでしょうが、遠くまで行くことでなく、途上を楽しむのが人生です。
これができれば、自分も、そして他者も、生きていることそれ自体が喜びであることがわかります。過程においては、何かを成し遂げるかどうがは問題にならないからです。
・・・いつでも「今ここ」を楽しむことに専念しなければいけないと思っています。」
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<考察>
哲学者の岸見一郎氏が、悩める若者に対して「幸福」をめぐる対話をした本書。
哲学とは何か? 哲学は「知を愛する」という意味ですが、その「知」は知識というよりは、よりよく生きることを教える知恵といえます。それは、多くの人が自明だと思っていることが本当なのか、疑うことから始まります。
「・・・成功でなく幸福を目標に生きます。
・・・人は誰でも絶望することもある。自分だけではない。知ってほしいのは、絶望したとしても、そこから回復できる、やり直せるということです。
・・・孤独であることを恐れないでほしい。孤独であっても、孤立するわけではありません。孤独であっても他者とのつながりは感じられます。
・・・短所だと思っていることを長所に置き換えます。自分の持っているものをプラスの視点で見られると、自分のことが好きになれます。どんな時も、今できることをやり続けるのです。
・・・自分がこうして生きていることがありがたい、と思えるようになれば、他者に対してもそういふうに思えるようになります。
・・・知識があるだけでは駄目です。その知識を、他者に貢献するために身につけようと思う人は、幸福な人生を送ることができます。
・・・貢献感を持っている人は、見返りをまったく期待しない。これが自立しているということです。その感覚を持っている人は、他者から認めれるかどうかを問題にしません。」
よりよく生きる知恵とは、知識を常識として鵜呑みにしたままにしないで、生きていること自体が喜びであることを心から実感できるまで、自分の頭で考えることから始まるようです。