> ビジネス書の書評 > クライアントが最もやってはいけないことは、コンサルタントを雇って、自分たちの代わりに考えさせることです。(カレン・フェラン)

クライアントが最もやってはいけないことは、コンサルタントを雇って、自分たちの代わりに考えさせることです。(カレン・フェラン)

<引用>

カレン・フェラン 神崎朗子 訳 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする』(大和書房 2018年)

「私は、マサチューセッツ工科大学(MIT)で理工学を専攻した後、経営コンサルタントとして30年も働いてきて、いい加減、芝居をつづけるのにうんざりしています。コンサルは、明晰な思考力で問題を解決したように見せかけながら、本当はクライアントの関係者の思考を読み取るのがうまいだけで、コンサルは「芝居」で商売しているのが実状です。「貴社の関係者の連携を強化するお手伝いをします」といっても、誰もコンサルティングの仕事を頼んでくれないからです。企業経営の確立したモデルが、能書きどおりに効果を発揮する証拠はほとんどありません。」

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<考察>

『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。』という書籍タイトルが、刺激的です。

経営コンサルタントの筆者が、経営者に本音で語るのは、コンサルタントの意見を鵜吞みにしないこと。コンサル任せにせずに、経営を自ら考えること。経営理論のモデルを信じ過ぎないこと。コンサルとの関わり方を経営者は、よく理解すること。さもないと組織がおかしくなってしまい、本当に会社をつぶしかねないですよと警告します。

有名な予測の間違い例として、経営コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーは、1980年代にAT&Tのコンサルを担当したときは、2000年のアメリカの携帯電話契約数は90万程度と予測しましたが、実際は携帯電話契約は、1億900万件に達しました。将来を予測することは、むずかしいものです。

経営コンサルタントの役割や効果について、筆者からの正直な提言をどう活かしたらいいでしょうか。

経営陣は、分かったふりをしないことです。経営陣は、実のところ現状や業界動向にそれほど詳しくないようです。そのため、コンサルタントに反論できません。実施しても効果が表れない場合も、コンサルタントはもう一度、もっとプロセスを厳密に実施するようにアドバイスします。そんな時、落ち着いて原理原則に沿って考えたいです。それは、関係者全員で取り組み、問題の解決にあたることです。自社の現状を一番知っているのは、経営陣よりも社員です。これから、自社のもつ能力を活かすため、業界の動向や経済シナリオ、競合会社の強みと弱み、規制の変更、消費者の声などをしっかりと関係者全員から対話によって把握することです。コンサルタントの第三者の見解を、関係者間の橋渡しや、解決のヒントに役立てることだと思います。