> エピソード > 日本の観光を世界の一流にする「日本の観光をやばくする」。 この使命のためには、現場の最前線でお客様と接するスタッフが一番重要だ。(中沢康彦 星野リゾート) 

日本の観光を世界の一流にする「日本の観光をやばくする」。 この使命のためには、現場の最前線でお客様と接するスタッフが一番重要だ。(中沢康彦 星野リゾート) 

<引用>

中沢康彦 『星野リゾートの事件簿』(日経BP社 2009年)

「本書の主役は、星野リゾートが運営する全国のホテルや旅館のスタッフ。お客様を満足させることは、簡単なようでむずかしい。大多数のビジネスパーソンにとって、お客様の気持ちは、永遠の謎かもしれない。その謎を解くために、クレームや問題となる事件がおこると、スタッフが自分で考え、悩み、行動し、周囲のスタッフを巻き込んでいく。代表の星野佳路は、けっして細かい指示は出さず、スタッフが自ら動き出すのを待つ。必要なときに、会議に参加したり、メールを送ったり、勇気づける。」

「星野が掲げた「リゾート運営の達人」というビジョンは、スタッフの間に浸透し、リゾート施設を再生するパワーを生み出している。合理的な手法と納得感あるルールによる経営スタイルは、一貫している。リゾート再生に当たり、調査会社をつかい詳細なデータ収集と分析により「コンセプトづくり」をする。メーンターゲットとなる客層をきめ、どうアプローチするかを考える。それに合わせて詳細なサービスメニューを組み立て、顧客満足度を高める。このサービスを実現するため、稼働率を上げつつ、業務のすすめ方を見直し、ムダをとりのぞく。こうして収益性を高め、早期の黒字化をはかる。」

「星野は、再生を実現するためには、社員のモチベーションアップが不可欠だと考え、社員の自由なコミュケーションを重視する。星野リゾートでは、若いスタッフが上司に向かって、遠慮することなく「自分はこう考える」と主張する姿を目にする。星野は、「誰の」主張かでなく、「どんな」主張かが重要だと考える。星野は、ビジョン実現のため、施設ごとに、3つの指数(顧客満足度、利益率、環境に関するロジカルポイント)に常に気を配る。精神論でなく、合理的な尺度をきめて、スタッフの意欲を引き出す。」

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<考察>

星野リゾートのエピソードには、多くの気づきがあります。

社長や経営幹部でなく、スタッフがお客様の声に対して、大胆かつ積極的に判断することが必要とします。スタッフがうまく判断できなければ、顧客満足度を高めることはできないからです。標準化や効率化、スケールメリットを得ても、最終的に観光ビジネスの競争力を決めるのは、スタッフの対応だとの経営判断です。

しかし、スタッフがつねに完璧でもないこと、クレームやトラブルが起きること、スタッフ同士の人間関係がうまく行かなくなり社内で対立や行き違いも起きること、星野リゾートでは、こうしたものを「事件」と呼びます。「事件」が発生した原因をしらべ、その場限りにしないことが大切だとするようです。気づいていない「何か」をつかむため、しっかり考え抜くことで、新しい発想がうまれ、スタッフが成長すると考えて、「事件」こそが新しいサクセスストーリーを生むと考え前向きに捉えるようです。

クレームをうけた担当者をしかることはしないようです。「考えさせる」ことを重視して、過去の事件のあらましや対応を社内の研修やブログで紹介して、次の同様な場面に、活かしていきます。事件への対応は、手間がかかりますが、それによって得られるリターンは大きいから、むしろ、楽しみながら事件に対応しているようです。事件が起きて、のたうち回っている社員の姿をみると、星野氏は、たのしくなってくるとも語ります。