> 経営哲学 > 能力の差は5倍ほど、しかし、やる気の差は100倍の開きがある。(永守重信)

能力の差は5倍ほど、しかし、やる気の差は100倍の開きがある。(永守重信)

<引用>

(p.157) 永守重信 『情熱・熱意・執念の経営』 (PHP研究所 2005年)

「社員に対する最高の福利厚生は、仮にわが社をやめても、どこでも通用する能力開発を最優先するという方針を貫いてきました。」

「創業期の採用試験のうち、「早飯試験」、「試験場に先着順」、「留年経験者に限る」、「大声試験」など、学校の成績を度外視してきましたが、心に種火をもっていて、自分で自分のやる気に火をつけられる人が、いい人材だと考えてきたからです。」

「人間の能力の差は、秀才もふくめて、せいぜい5倍ほど、しかし、やる気や意欲の差は、100倍の開きがあると感じているからです。」

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<考察>

従業員のやる気や、モチベーションをいかに高めるかについて、悩まれている経営者は多いです。

うちの会社に勤めれば、いずれどこの会社へ行こうが通用する。仕事の能力が向上することを最優先してやるんだ、という本気の凄みは、確かに自らが従業員の立場になったと考えてみると納得できるものです。もったいぶらないで、何でも教えてやるぞ、しかしその分厳しいから、ちゃんと頑張るんだ。みんなが同じ気持ち、成長するんだという職場環境で、真剣に仕事に向きあえば、本当に実力が身につくように思えます。福利厚生の他の施策に頼らずとも、モチベーションが維持できそうです。

創業当時の採用試験がユニークで有名ですが、どこか秀でていて、やる時はやる、何か魅力を秘めた人間を見極めるために、あえて常識外の試験で選抜したのかもしれません。心にやる気の種火を持っているかどうかを、本人に直接聞くよりは、意外な試験を通じて日頃の行動に見いだした方が確実とも考えると、戦略的な側面もあります。モーター開発などの事業内容ですから、ちょっと変わった人材でないと、画期的な開発を任せるられるような人財に成長しないと考えていることもあるようです。

福利厚生にふんだんに予算をかけて、働きやすい職場づくりを優先することも大事ですが、成長する機会やチャンスを提供するという経営者からのメッセージを職場に浸透させることも大事に思います。働き方改革という時代の変化に、いろんな事情で会社を離れざるを得ない状況になっても、どこでも通用する能力を手に入れ、誇りをもって働くことを最優先する分かりやすさが、永守氏の真骨頂だと思います。

仕事そのものに魅力がないと、やる気やモチベーションは下がってしまいます。ときに失敗したり上手くいかなくて落ち込んでしまっても、自らやる気の火に再び灯すことができる素養がある人であれば、挫けずに立ち直ってくることでしょう。経営者も仕事で挽回できるチャンスを用意し、皆の働きぶりを注意深く見守らなくてはいけないと考えます。