離見の見(りけんのけん)自分の芸を、観客の目で見なさい。(世阿弥)
<引用>
齋藤 孝 「世界の見方が変わる50の概念」(草思社 2021年)
「演者自身の目で見る自分の姿は、主観的な見方(我見 がけん)ですが、我見に捉われていては、観客を満足させられません。・・・自分の見方が絶対だと思っていないか。・・・離見、つまり、自己を客観視する力が必要となります。」
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<考察>
もう一人の自分が、自分を見ている感覚を覚えると、余裕がうまれて独りよがりにならずにすむようです。
離見の見(りけんのけん)の効果は、自分をあらため直す自己修正力であったり、視野がひろくなり周り全体を俯瞰して把握するものの見方といえます。
世阿弥は、「後ろ姿を覚えねば、姿の俗なるところをわきまえず」とも言っています。これは、心を後ろにおいて、背中から自分の立ち振る舞いを見るようにして、生き方や仕事ぶりに恥ずべきことがないか見極めなさいという意味です。
いっそ自分の姿や行いを他人だとしたら、何が見えてくるのか興味深い反面、冷静に直視できるか不安になります。もう一人の自分が、自分を見ている感覚は、意識しないとできません。世阿弥は、舞台ばかりでなく、いろんな場面で、離見の見(りけんのけん)の活用を問われたように思います。