> 生きがい・働きがい > 同じ条件の中にいても、ある人は生きがいを感じられなくて悩み、ある人は生きるよろこびにあふれている。この違いはどこから来るのであろうか。(神谷美恵子)

同じ条件の中にいても、ある人は生きがいを感じられなくて悩み、ある人は生きるよろこびにあふれている。この違いはどこから来るのであろうか。(神谷美恵子)

<引用>

神谷美恵子 『生きがいについて』 (みすず書房、1966年初版)

1914年岡山に生まれる。1935年津田英学塾卒、コロンビア大学に留学。1944年東京女子医専卒、同年東京大学医学部精神科入局。1952年大阪大学医学部神経科入局。1957年-72年長島愛生園勤務。1960年-64年神戸女学院大学教授。1963年-76年津田塾大学教授。医学博士。19791022日没。

「生きがいという言葉は、日本語だけにあるらしい。感染症に苦しむ人々に寄り添い、その体験から、同じ条件の中にいても、ある人は生きがいを感じられなくて悩み、ある人は生きるよろこびにあふれている。この違いはどこから来るのであろうか。」

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<考察>

「生きがい」について、これが正解だからと人に押しつけようという書籍でなく、教育者として医師として、迷い悩みながら歩んできた自らの経験から、真摯に向きあってきた思考過程を提供してくれます。

生きるよろこびとは、何か?

英語や他の言語には、日本語で意味する「生きがい」に、ふさわしい表現はないようです。「生きがい」について、改めてじっくり考えることは少ないと思いますが、ときには、「わたしの生きがいは何なんだろう?」・・・と、深刻にならず穏やかに見つめ直すことも、経営者に大切なことでしょう。「生きがい」には、自己実現や社会貢献、子供の未来や地域の発展、スポーツや会食など、さまざまあります。目標やビジョンが達成されるかどうかが、真の「生きがい」ではなく、日々の歩み、目標へのプロセス自体が「生きがい」そのものだという考えもあります。

著者が、ハンセン病の感染症に苦しむ人々に寄り添い、同じ絶望的な条件であっても、ある人は生きがいを感じられなくて悩み苦しみ、ある人とは生きる喜びにあふれている現実に直面して、何故そうした違いが生じたのか、人間のあり方に対する再発見をします。

仕事に懸命に打ち込み成果を出した経営者が、ときに疲れて、働くよろこびや「生きがい」を見失いかけることもあります。仕事そのものに、「生きがい」を感じ情熱をもって取り組めていた日々が嘘のように、毎日の仕事になんとなく魅力を感じなくなってしまったような時には、50年以上ずっと読み継がれてきた本書に、たすけを借りてもいいかもしれません。身の回りのどこか、たのしく働く喜びや「生きがい」を自然に感じるものを手がかりに、蘇ってくる何かを、焦らず待ってみてもいいかと思います。