> ビジネス書の書評 > 巨大企業向けに開発あるいは採用された経営技法が、皆さんが日本で経営している中小規模の会社でどれだけ有効活用できるかを、見極めてください。(山田修)

巨大企業向けに開発あるいは採用された経営技法が、皆さんが日本で経営している中小規模の会社でどれだけ有効活用できるかを、見極めてください。(山田修)

<引用>

山田修「本当に使える経営戦略・使えない経営戦略」(ぱる出版 2013年)

「欧米発祥で世界にブームを引き起こした経営戦略のセオリーとフレームワークについて、それらの著者の執筆当時の肩書や以前の出自、関与企業を一望すると、あることに気づきますそれは、「彼らはみな関係者同士だ」ということです。

・・・アルフレッド・チャンドラー、マイケル・ポーター、I・H・アンゾフ等々・・・PPMはボストンコンサルテインググループ(戦略ブティック)・・・戦略本の著者は、代表的な顧客大企業、ビジネススクール教授、戦略ブティックの「産学共同体」を交互に行き来し活躍してきました

・・・『エクセレント・カンパニー』、『コア・コンピタンス経営』、『ブルー・オーシャン経営』、『ビジョナリー・カンパニー』などの系譜で目指す戦略は、その業界で世界的にナンバーワンとなる企業を対象にしています

・・・欧米発のこれらの戦略セオリーが日本でどうしてこのように持てはやされてきたのか。・・・日本のアカデミーにおける経営学の体系が、ほとんどアメリカの焼き直しや翻訳紹介だからです

・・・ある大学教授は、「日本の経営大学院は、自動車でいえばエンジンなどのメカニズムを教える。一方、北米のビジネススクールでは自動車の運転の仕方を教える」と自嘲気味に話していた。・・・日本の大学アカデミーの経営学は役に立たない、あるいは現実離れしているといわれる所以がここにあります。」

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<考察>

経営戦略(セオリー、フレームワーク)には、ブームがあり俄然注目されるときもありますが、すべてが正しいとは限らない。しっかり見極める判断力が必要だと本書は指摘しています。

偏りがないか、現実のビジネスにそぐわないところがないか、気をつけながら読んだり理解しなければならないと語ります。ベストセラーとなったセオリーは、別々の観点から主張されるものですから、冷静に考えれば、すべてのセオリーが同時に成り立って正しいことはあり得ないわけです

有名な戦略セオリーでも、実際の企業活動に使えるのか、机上の空論なのか、著者が6社のプロ経営者の経験から、本当に使える経営戦略と使えない経営戦略を俎上にあげて吟味して解説しています。著名なセオリーだから正しいはずだという前提からはなれて自然なスタンスで自らの頭で考えて、判断することが大事だとすすめています。

大企業御用達の舶来セオリーであったり、分析するだけで何も生まれないフレームワークだったりするわけですから、現実のビジネス活動について、大意をつかむことに役立てればいいという割り切りで、理解することも大切だと思います。