> ビジネス書の書評 > 人材はビジネスの一部分ではありません。人材なくしてビジネスは成り立たないからです。ビジネスとは、すなわち「人」です。(カレン・フェラン)

人材はビジネスの一部分ではありません。人材なくしてビジネスは成り立たないからです。ビジネスとは、すなわち「人」です。(カレン・フェラン)

<引用>

カレン・フェラン 神崎朗子 訳 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。 コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする』(大和書房 2018年)

「非理性的で感情的で気まぐれで、クリエイティブで、面白い才能や独創的な才能をもっている人間たち。そんな人間が理屈どおりに動くはずがない。経営コンサルも流行りのダイエットのように、各戦略は、そのまえの戦略の欠点を補うものですが、やがて、その戦略自体の欠点によって、ダイエットとリバウンドを繰り返す悪循環に陥ります。私の提案は、役に立たない経営理論に頼るのはもうやめて、大事なのは、モデルや理論などは捨て置いて、みんなで腹を割って話し合うことに尽きます。対話や人間関係の改善が、ビジネスで利益をもたらすはずです。人材のマネジメントさえできれば、あとはすべてうまくいったと同然だといえます。」

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<考察>

ヒト、モノ、カネ、情報の経営資源のうち、ヒトという資源は、可変的です。

人はモチベーションや仕事の意味づけしだいで、発揮する能力が大幅に変わります。この点で、ほかの固定的な経営資源と異なります。著者は、主張します。「人材はビジネスの一部分ではありません。人材なくしてビジネスは成り立たないからです。ビジネスとは、すなわち「人」です。人間こそ問題の原因であり、解決の手立てなのです。」

経営者は、優れたビジネスモデルや理論を駆使すれば、従業員が生き生きと自発的に働くことができるはずと希望をもって、コンサルタントに相談してくるようですが、著者はそうでなくて、対話が大切だと語ります。社員の話をきちんと聞いたことがありますか?今の仕事に滞っていることはないか、悩みはあるのか、手助けできると伝えているのか、コミュニケーションを自ら取っているかなど、経営者から、対話がスムーズでできる環境づくりに気を配らないいけないようです。従業員が、困ったことがあるからと自発的に意見を伝えてくるタイミングは手遅れのことが多いです。

本人の能力を存分に発揮したいと思える会社の役割や仕事の意味づけを、経営者が本音で伝えることができる体制であるかが問われます。

建前で語る経営者のビジョンやミッションは、従業員の心に響かないものです。人は、自分に関心を持ってほしい、自分の意見を聴いてほしいと思っています。忙しさを優先したり、面倒だと思ったりして、経営者は、対話のチャンスを逃しがちです。むしろ、正面から従業員と対話することに恐れを抱く経営者もいるようです。複雑で多様な人間に対して、経営理論で解決してコントロールできると思わないで、人と人が向きあって、お互いに相手の思いを聞いて、自分の思いを伝える対話ができて始めて、経営する側と働く側の役割が共有できます。

人はおしえて、おそわりあって、認め合う間がらになるのだと思います。