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すべてのことに感謝しよう。(中村天風)

<引用>

(p.56) 中村天風 『ほんとうの心の力』 (PHP研究所 2006年)

「たとえば、事業に失敗したときでも、「運が悪い」と思わないで、「事業をする心構えや方法に間違いがあったと、天がおしえてくれているんだな」と。「筋道が違っているところがあっても、生かしておいてくれたなら、盛り返すこともある。ありがたいことだ」と、心がけを取り替えて、すべてのことに感謝しよう。」

「こうして生きていることに歓喜の気持ちをもとう。」

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<考察>

中村天風は、人間存在の根源を、「心の有りよう」にもとめて、われわれの人生は、「心の支配」を受けているとしました。

生活の信条を大切にして、自然体でいきること、「積極的な精神」とは何かを問いかけています。

ここでいう積極的とは、一般的な消極的に対する積極的という対比の意味でなく、雑念や恐れがなく、張り合う気持ちや負けまいとする感情でなくて、もう一段高い境地として「絶対的な積極」を位置づけています。

どんな不利な状況でも、無理して肯定的にプラス発想をした方がいいというような積極的という理解とは違うようです。否定的な捉え方やマイナス思考を戒めるといった類いを論じているわけでなく、すべてのことに感謝すること、生きているそのものを喜びに捉えるような境地でいれば、物事の定義づけ自体が変わってくるとの主張と考えた方がいいようです。

経営においても、どんな事態が起きようとも、すべてが必ず何かの事業に役立つと信じること、強い覚悟を持ちつづけること、そうした「絶対的な積極」という意識で、判断して行動すればいいよと、「心の力」の活かし方をすすめてくれていると思います。ピンチに陥った時、この積極精神を思い出して事態の収拾を図るため、事実関係の意味づけを変えれば、活路を再発見できるかもしれません。