> イノベーション > 「イノベーションの実現が課題だ」と言われることが多いですが、これはイノベーションを本質的に、誤解している回答です。(山口周)

「イノベーションの実現が課題だ」と言われることが多いですが、これはイノベーションを本質的に、誤解している回答です。(山口周)

<引用>

山口周 『ニュータイプの時代』(ダイヤモンド社 2019年)

「「イノベーション」は、「課題」(アジェンダ)にはなり得ません。なぜなら、「課題」を解決するための「手段」が、イノベーションだからです。・・・イノベーションという「手段」が、「目的」にすり替わってしまっているというのが、今日のビジネスの混乱を象徴しています。・・・イノベーターは、具体的な「解決したい課題」が明確にあり、それを解決するための「手段」が、たまたま画期的なものであったために、周囲から「イノベーション」と賞賛されているだけです。」

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<考察>

解決したい「課題」が、明確になっていますか?本書の指摘は、これからの時代への問いかけです。これまでは、問題解決の能力が、高く評価されてきました。

それは、世の中に「不満、不便、不安」という問題があって、解消したいというニーズが存在していたからです。しかし、現代は、物質的なニーズや不満があらかた解消されています。問題がなくなりつつある状態では、解決する能力が評価されづらいです。むしろ、問題を「発見」する能力がもとめられるともいえます。

環境変化がはげしいと、経験豊富という価値が、逆に足かせとなりかねません。予測や最適化も、連続的な環境変化が続く状況では困難となってくるようです。

では、どうしたらいいのか?本書では、問題を発見し、提起できる人を、「ニュータイプ」と定義して、これからの社会や人間のあるべき姿を「構想」する力が、試されてくると主張します。既存の正解が、役に立たなくなりつつある現在では、柔軟に「構想」しながら、解決したい「課題」を見つけ、それを具体的に明確にしていくことから始めようとしています。ただし、イノベーターと賞賛される人たちも、いつも成功しているわけでなく、「構想」を見誤って、数多くの失敗の事例があることも、合わせて指摘しています。